劇画ヒットラー│あらすじ&感想〜人生に挫折した若き日のアドルフ・ヒトラーを描いた作品〜
2016/04/27
作品情報
作品名:劇画ヒットラー
巻数:全1巻(完結)
著者:水木しげる
出版社:水木プロダクション
あらすじ
画家の夢破れ、母の遺産を食いつぶし、公園を寝床にしていた青年はついに浮浪者収容所を訪れる。アドルフ・ヒットラー24歳、当人はともかく、当時誰の目からも彼は人生の落伍者だった…。ドイツ人を熱狂させ、史上まれな独裁者となったアドルフ・ヒットラーとは、一体どんな人間だったのだろうか?水木しげるが見たアドルフ・ヒットラーの真実の顔とは!?
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「劇画ヒットラー」の感想
水木しげる氏といえば「ゲゲゲの鬼太郎」などの妖怪漫画を思い出す人が多いだろう。
そんな氏の作品の中に、ナチスドイツの総統であったヒットラーの人生を描いた漫画があるのをご存知だろうか。
この作品が特に焦点を当てているのは、人生に挫折した画家崩れの青年であった若きヒットラーの姿である。
自分を芸術的天才だと思いながらも、社会からはほとんど相手にされず、一人自己陶酔の中にひたるだけの青春生活。のちにドイツの総統となるヒットラーのうらぶれた姿を、水木氏独特の画風が一層彼の苦境を物語っているのが面白い。
挫折感に満ちた青年に訪れた転機が第一次世界大戦の勃発だ。この時から水木氏が描くヒットラーの目つきが生き生きと輝きだす。
ドイツの兵士として志願し、一時は失明の危険を冒しながらも、なお敵国に抱く憎悪と自国への愛国心を生き生きと描き出している。
その後ヒットラーは政治活動に身を投じるが、最初彼の周辺に集まってきた人々の多くが奇人変人であったらしい。
ヒットラーの取り巻きの異様さを言葉で語るには数ページを要することになるだろう。
けれども漫画の良いところは、一見してその雰囲気を理解できるところにある。
もっともそれは水木しげる氏の表現能力あってのことではあるが。
「劇画ヒットラー」は単に悪としてのヒットラーを描くのではなく、彼の人間としての弱さ、コンプレックスなどをある種の憐れみをもって描かれていることではないだろうか。
妖怪に愛情を注いだように、水木氏はどんな悪役にも哀れさを感じ、それを見事に表現することができるのだろう。
ライター:もんじろ(40代男性)
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